バリアフリー情報のポータルサイト「picknic(ピクニック)」様へインタビューを行いました

バリアフリーに関する情報を発信する情報メディア「picknic(ピクニック)」を運営されています、株式会社フォレストブルーの岩永修三さんにお話を伺いました。

バリアフリーに関する情報を発信する情報メディア「picknic(ピクニック)」を運営されています、株式会社フォレストブルーの岩永修三さんにお話を伺いました。

picknicウェブサイト
http://www.pick-nic.com/

ピクニックを立ち上げたきっかけを教えてください。

私自身、19歳の時に車で事故を起こしてしまい、障がいを負いました。脊髄を損傷して首から下の神経が麻痺してしまったんです。その日以来、車いす生活になりました。
4~5年のリハビリ生活のあと退院し、やっと自宅に帰り、社会復帰をしたのですが、日常生活をしていく中で、いかに車いすで生活するということが大変か、身に染みてわかったんです。
例えば、ちょっとご飯を食べに行こうと思っても、レストランに段差があって入れない。車いすで入店できるお店をネットで調べようと思っても、わかりやすく情報発信しているサイトが見当たらない。
全国レベルですと、個人的にボランティアで地方のバリアフリーマップというものを発信している人はいましたが、統一してわかりやすくしたものがなかったんです。それなら、自分たちでそういったものを作ろうと思ったところ、学生時代の友人などから有志が集まってくれて、今のピクニックを立ち上げました。
自分自身の“不便だな”を解決しようとしたのがきっかけです。

ピクニックの名前はどういった意味があるのですか?

情報メディアを作るにあたって、飲食店だけじゃなくホテルの情報など色々なジャンルのバリアフリー情報を分かりやすく、しかもローカルではなく全国で発信していこうと思いました。ピクニックのような楽しい感覚で出かけられるように、との意味を込めています。

全国のバリアフリー情報はどのように集めたのですか?

まずは有名なスポットのリスト作りから始めました。その中で直接いくつかの施設の取材を行い、情報がある程度集まってから、リストの全施設にアンケートを送って、答えてもらう形で集めました。アンケートは、車いす用のトイレがあるか?入口は階段になっているか?スロープやエレベータはあるか?など項目を細かくリストアップし、マルバツで答えてもらう形式です。
反響があったのは公共施設、つまり美術館、博物館などが多かったです。一番欲しかった民間企業からは、なかなか反響を得られませんでした。

それをどのようにして打ち破られたのですか?

何度も何度もメールを送り、それでも返答の無い施設には直接電話で連絡し、担当の方にピクニックの趣旨を説明し、理解を求め、そうやって徐々に情報を増やしていきました。全国的には掲載できている施設はまだまだですが、継続は力なりなので、地道に続けています。
掲載が増えることで、施設側からの掲載依頼も少しずつ増えてきています。

事業としてはいかがですか?

初めは全て無料でスタートしましたが、収益源を見つける必要がありました。

というのもピクニックを運営しているのは民間企業ですので、会社である以上どこかで収益化をしないとサイトの運営が維持できません。
そこで初めは無料で参加して情報を掲載してもらい、あとから有料掲載に切り替えてもらう方式を採用しました。有料掲載は、無料掲載に比べて画像を多く掲載できるとか、動画を配信できるとか、より多くの情報を発信できるようにして差別化を図っています。

有料掲載の反響はいかがでしたか?

まだビジネスとして目標のラインには達していませんが、徐々に有料掲載の数は増えています。サイトの認知が広がって、施設側からの有料掲載のオファーも増えてきました。

ただ情報収集から営業まで私がメインで、一人で行っていますので、スピード的になかなか思い通りに行かないのが現状です。

それは大変ですね。サイトの情報更新もお一人でされているのですか?

以前は施設に定期的に連絡を入れて、更新情報を送って頂いてから、こちらで更新していました。これには時間も手間もかかりましたので、今は有料掲載をして頂いている施設にはIDとパスワードを発行して、施設側で直接情報の更新ができるようにしました。

サイトのコンテンツについてお伺いさせてください。

ピクニックは当初、YAHOOのような総合情報ポータルサイトの障がい者版を作ろうと思い描いていました。そのため、様々な種類のコンテンツを作ろうとしていましたが、運営を続けていくと、そのためにどれだけの人員やコストが必要となってくるかがだんだんわかってきまして、限界も見えてきました。今は手広くコンテンツを提供するよりも、情報を絞って深く掘り下げた情報発信をして、ニッチな分野の中でナンバーワンを目指すことが重要だと感じるようになりました。

そういった点から今はバリフリ情報(バリアフリー施設情報)をメインに注力しています。具体的には、ホテルを中心としたその周辺の情報の充実を図っています。観光情報の充実ですね。
将来的にはバリアフリーのアドバイザーやコンサルティングなどリアルなビジネスに結び付けていくことを目指しています。

アイコンプロジェクトという活動を行っているそうですが。

はい。アイコンプロジェクトは半年ほど前にフェイスブックを活用するにあたって始めた企画です。現状で、特に飲食店のホームページにバリアフリー情報が掲載されていないことがとても多いですので、バリアフリーの対応状況がわかる共通のアイコンを作ったんです。これを各お店のホームページに掲載して頂ければ、ひとめである程度のお店のバリアフリー状況がわかるようになります。フェイスブックは飲食店さんも導入しているところが多いので、今後、多くのお店に広まっていくよう働きかけています。

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

バリアフリーという視点でインターネットを見ると、バリアフリーの情報は、点で存在しています。個人運営のバリアフリー情報サイト、市役所のバリアフリーマップ。これらは使い方も、情報の基準も違っていて統一性がありませんので、サイトを見るだけで時間も手間もかかってしまうんです。そういった点在する情報を一元化したいと思っています。同じフォームで、同じ基準でわかりやすくバリアフリー情報を発信していきたいです。

また企業の視点に立ってみると、企業が自社のバリアフリーの取り組みを発信するメディアがありません。ピクニックというメディアを利用してPRをしてもらって、そして利用者には口コミ機能で生の声を届けてもらって、企業はそのフィードバックを受けて施設の設備やサービスのさらなる充実を図る、そして結果的にバリアフリースポットが増えていく。そういった流れを作ることで、外出をためらっていた人たちに外出する機会を増やしてもらえるし、生活も豊かなものになるし、企業にも利益を還元できると思っています。

双方が幸せになるようなメディアにしたいです。

そのためにはバリフリ情報の充実も大切ですし、口コミの充実も重要視しています。口コミを増やすためにフェイスブックを活用したりして、ピクニックのPRを行っています。全てが手さぐりで、試行錯誤の繰り返しですが、実現したいと思っています。

ピクニックは障がいを持つ方の視点に立って、障がいを持つ方がより便利に、豊かに生活できるように情報を発信されています。先進国の中でも日本の福祉は遅れているとも言われていますが、岩永さんの活動を通してバリアフリー社会のより一層の充実が実現されるよう、応援しています。

インタビュアー:将積哲哉

ウェブサイト

http://www.pick-nic.com/