世田谷エリアの3つの街の情報メディア「自由が丘℃」等の運営会社様へインタビューを行いました

自由が丘、駒沢、三軒茶屋。世田谷の人気エリアを紹介する地域メディア「自由が丘℃」「駒沢公園倶楽部」「三茶TRIP」を運営されています、株式会社明和住販流通センターの代表取締役 塩見紀昭様にお話を伺いました。

自由が丘、駒沢、三軒茶屋。世田谷の人気エリアを紹介する地域メディア「自由が丘℃」「駒沢公園倶楽部」「三茶TRIP」を運営されています、株式会社明和住販流通センターの代表取締役 塩見紀昭様にお話を伺いました。

自由が丘℃
http://oka-do.net/

駒沢公園倶楽部
http://komazawa-club.net/

三茶TRIP
http://3-cha.net/

地域メディアを作られたきっかけから教えてください。

私どもは不動産会社として、三軒茶屋と自由が丘、駒沢、この3つのエリアで営業を行っております。

このエリアは人気の高い地域となっていますが、こちらで事業をしていて、何故このエリアの人気が高いのかを考えると、不動産をしている者としては駅からの距離ですとか、設備や家賃ですとか、物件の良し悪しだけに目が行くのですが、そうではなくて当然の事として街自体の魅力が大きいのだと思い至りました。そんな街自体の魅力も、弊社にとっては商品価値のひとつになっていると、ずっと感じていました。
そこで、そもそもこの自由が丘や駒沢、三軒茶屋の人気が高いのは誰のおかげかと言えば、それは弊社の力ではなく、住んでいらっしゃる方や行政の方、様々な方々が努力をしてブランド力を培った賜物なのです。
その諸先輩方の努力の上に乗った形で、このエリアで不動産業をしています、というのは、少々おこがましいと感じていました。そういう感覚があり、何かこの街に恩返しをしたいと常々思っていました。

恩返しの仕方というのは色々な方法があります。例えばよくある方法は商店街の活動に参加をすることで、ボランティアでお祭りを手伝ったり、商店街の企画に参加したりするという事があります。そういった活動は一部では行っていますが、ただそれはあくまでも地域にいる方に対してのボランティア、サービスであって、私どもはもっとこの地域を“こういう街なんですよ”という表現をしたいと思っていました。そういったものとして“街のガイド雑誌”はよくありますが、あれは外部の出版社などが人気の高い地域を選んで取材をして雑誌にする場合が多いんです。そうではなくて、実際にこの地域に縁があって長く住んでいる方が住んでいる目線で感じる、街の香りや雰囲気といったものを発信したいとずっと思っていました。その媒体として、街のメディアサイトの運営に興味があったのです。

ところが不動産会社の社員で立ち上げてみたところ、なかなかうまくは行きませんでした。やはり不動産会社ですと、どうしても興味の先が物件や土地といった所に行きがちになってしまったのです。では、どういう形で運営をすればいいのか考えていたときに、メディアプロデューサーの有田佳浩さんという方と知り合うきっかけがありました。有田さんも街のメディアサイトを兵庫の芦屋で手がけられていて、センスの良さですとか、お会いしたフィーリングも合いましたので、一緒に自由が丘などのメディアサイトをしましょうという話になりまして、基本的には彼に全てを任せて運営をお願いしたというのが、始まりです。

なるほど、恩返しという気持ちが出発点なんですね。

こう言うと格好が良いのですが、私どもはこのサイトで一切儲けようとは思ってはいません。出しっぱなしでもよく、バナーを貼って広告収益を上げるといった事は、一切考えていないのです。よく“何故ですか”と聞かれますが、それはこのメディア運営は私どもにとってこの街を人気の高い街にして頂いた方々への恩返しと捉えているからです。ですので、基本的なコンセプトとして、バナーは貼りませんし、広告も一切載せません。広告掲載の話はありますが、サイトの雰囲気に合わない場合も多いですし、お断りをしています。広告料を頂く代わりに載せるのではなくて、私たちがいいと思う情報を載せるということを目指して運営しています。
今、ライターとして6人いらっしゃる奥様が本当に純粋に街を練り歩いて、集めた情報を載せています。編集会議が月に一度ありますが、6人の奥様が集めた様々な情報には、私も知らなかった事がたくさんあり、そういう女性特有の情報の早さというのは、凄いと感じています。

とはいえ私どもは不動産会社です。弊社の不動産サイトが別にありまして、リンクを貼っているので、弊社が狙っているのはその部分です。二次的ではありますが、今すぐには自由が丘に住まなくても、将来的に住みたい方や、友達や知人に紹介をしたいなというときに、おぼろげに弊社のウェブサイトが出てくる、つまり“そういえば自由が丘だったらあのウェブサイトに不動産があったぞ”と思いだしてもらえる感じを出したかったと言うのはあります。
おかげさまで、特別狙ったわけではありませんが、結果的にはウェブサイトから反響があり、収益になっています。ウェブサイトからの、“自由が丘に住みたいんですけど”という問い合わせがかなりあります。このエリアは不動産会社がたくさんありますので、お問い合わせをして下さったお客様に弊社を選んで頂いた理由を伺うと、“サイトがよかった”ですとか、“こういうサイトをやってる会社は安心感がある”ですとか、そのように感じて頂いていることが分かりました。そのようになったらいいとは思っておりましたが、継続して運営をしていますと、結果的にお客様にも良いイメージを持って頂けるようで、良いお客様が沢山来て下さるものです。大きな収益にはなっておりませんが、高い看板や広告にコストを掛けることに比べると、メディアを運営している方がよっぽど良かったという実感を持っています。

6人のライターの方々はプロとしてやっていただいてるのですか?

いえ、ライターの方は皆、余裕のある奥様です。パートをしないと生活が苦しいということはなく、街の良さを発信したいという思いのある、非常に朗らかで良い方々が集まってくれています。皆さんご主人がいらっしゃって、お子さんも育てていて、それでも空いた時間を取材に使ってもらって、それに対して報酬をお支払いするという形です。
「こういうところを取材したい」と思ったところに取材をして記事にしてもらっています。また写真は大事だと思いますので、良いカメラを皆さんにお渡しして、撮り方もある程度は勉強してもらって、なるべくプロが撮ったような撮り方になるようにしてもらっています。
文章や写真には気を使っていますので、あくまでライターの方のセンスや感覚は大事にしますが、最終的には有田さんがチェックをしてから載せるというような構図になっています。

ライターの方はどのようにして集められたんですか?

新聞折り込みで募集をしました。
募集のチラシをかなり気取って書いたところ、感度の良い方が10人くらい集まりました。来た方に聞いたら、やはり募集のチラシを見て感じるものがあったという方が来て下さっていたので、ただ募集をするのではなく、そういった工夫も大事だと思います。集まってくださった中から、有田さんが感覚的によさそうだと感じた方を選んで、今6人になりました。一度に募集したというわけではなく、始めが駒沢、次が三軒茶屋、最後が自由が丘と、それぞれ若干時期がずれています。
6人の方が2名ずつ3つのエリアを担当していて、それぞれの街に実際にお住まいです。ですので、月に一回の編集会議で皆さん集まりますが、それぞれ雰囲気が違うので、編集会議は面白いです。

サイトそれぞれ、カラーとかイメージも違いますね。

そこも有田さんに考えてもらいました。有田さんには、自由が丘と三軒茶屋と駒沢で一週間ずつ生活してもらい、朝から夜まで歩き回ってもらいました。距離的には近いですが街の雰囲気や色など、まったく違う街だと言っていいくらい、大きく違います。

自由が丘のイメージは“女性”、“おしゃれ”、町全体に女性色が付いていて“品が良い”と言った感じです。「自由が丘℃」の「℃」というのは温度を感じてほしいという有田さん独特のセンスで、自由が丘特有の熱気を感じるというニュアンスで付けました。

駒沢は今でこそ大きな運動場になっていますが、戦前に日本で初めてのゴルフ場“東京ゴルフ倶楽部”が作られた地域です。そこをひっかけて、「駒沢公園倶楽部」としました。駒沢は駒沢公園を中心に、“マラソン”や“ペット”、“アクティブに走る”、“子供と散歩する”といったイメージがあるので、緑を基調としています。

三軒茶屋は、雰囲気が独特で映画のalwaysのような昭和の雰囲気が残った街です。三軒茶屋の裏口に入った事があればわかると思いますが、独特の味があって、おでん屋さんや古い映画館、ジャズクラブがひしめいていて、気取っていない感じが気に入っています。下北沢とは近くて似てはいますがやはり違っていて、若い人が行く感じの下北沢に対して、三軒茶屋はもう少し大人向きで落ち着くような印象があります。
「三茶TRIP」はそんなちょっと違う雰囲気の街を旅するような感じをイメージしています。

メディアの企画も「恩返し」ということを中心に作成されてるんですか?

サイトを見ていただいたらわかりますが、色々と地域に協力する企画をしています。
先日の大道芸(ウェブサイト)では、スポンサーとして協力をお願いされたので、協力をしました。駒沢の方ではマラソン教室に力を入れてバックアップをしたり(ウェブサイト)、プレゼント企画や葉書を作る企画をしたり、今行っている写真コンテストなど、色々と仕掛けています。マラソンはブームですので、バックアップをしてオリジナルのTシャツを差し上げたりしています。そういった企画を何度もしていますので、そこそこコストはかかっています。

企画はどのくらいの頻度で行っているんですか?

だいたい年に3回ほどです。編集会議で様々なテーマを決めて、3つのエリアで共同で実施する場合と、個々のエリアで実施する場合と、色々あります。
面白い企画だったのは、2年前位に実施した、各店のお薦めスイーツという企画です。自由が丘、駒沢にはスイーツのお店がとにかく多くありますので、スイーツのキャンペーンは非常に良い評判が得られました。なるほどなと思ったのは、「あの店が美味しい」のではなく、「あの店のあの商品が美味しい」という感覚。そういうピンポイントにバシっといく感じが面白かった。非常に良かったので、今度は蕎麦で企画しようかとか、うどんで企画しようかと考えています。このエリアには蕎麦、うどんも美味しいお店が多くありますから。
後は、自由が丘で実施した面白い企画は、PLAYERSさんというカバン専門店とカバンを共同開発した企画(ウェブサイト)です。PLAYERSさんが弊社のメディアサイトを気に入ってくれていて、一緒にやりましょうと声を掛かけてきてくださって実現しました。
雑誌とコラボレーションしたこともあります。世田谷に特化した世田谷ライフという、世田谷区の歯医者さんや銀行、美容院などに必ず置いてある雑誌があります。そのエイ出版(ウェブサイト)の編集の方に、声をかけていただいて、紙面で座談会の企画をさせていただきました。インターネットとは違う実態のある本も大事だと思います。

お陰さまで最近サイトに対して、新しくお店オープンするから取材に来てくださいといった問い合わせも入ってきていて、メディアとしての成長を感じています。

今後はどのように運営されていく展望をお持ちですか?

私どもはウェブメディアのプロではありませんので、楽しく運営を続けられたらいいかなと、そういうイメージでいます。サイトを広めたいとは思いますが、商売に広げたいとは思っていません。マイペースで続けようと思っています。
ただ、運営するからには、この地域にランクの高い方達が住んでいる事を前提に、そういった方達が見ても耐えられる内容は持ちたいと思っています。まだ改善しなければいけない箇所はありますので、私も素人ながらにサイトの使い勝手や見やすさなどの話はしていて、言いたいことを言っています。フェイスブックページも早く用意したいと思います。
基本的には有田さん始め皆さんを信頼して細かい事は言わないですが。

弊社にとって一番のメリットは、こういったメディアサイトを運営している会社だったら誠実そうだといった、良いイメージをお客様に持って頂ける事。それと、メディアサイトを通して様々な方や、企業様と繋がりができるという事があります。
メディアサイト用に名刺も作っていて、いつも持ち歩いています。弊社の社員にも持たせていて、会社の外で人と会うときには、“メディアサイトをやっています”と渡すようにしています。
地域の方々にとっても、商店街に人が集まることは望ましいわけですから、我々と目的は近くにあります。ウェブに来る人と実際に足を運ぶ人とは重なりますので、お互いに協力し合う関係ができています。

楽しく、面白おかしく、けれども本気で取り組んでいます。

塩見社長の「恩返し」という気持ちで始まった街サイト。目先の効果ではなく、もっと大局を俯瞰したメディアへの取り組み方にはとても感銘を受けるものがあります。塩見社長のお人柄を感じるインタビューでした。

インタビュアー:将積哲哉

ウェブサイト

http://oka-do.net/
http://komazawa-club.net/
http://3-cha.net/