株式会社高齢社 上田研二様へインタビューを行いました

株式会社高齢社の上田研二代表取締役会長に株式会社高齢社のミッションについてお話を伺いました。60歳から75歳の方しか雇わない、そんなユニークな企業の、取組みとは?

株式会社高齢社の上田研二代表取締役会長に株式会社高齢社のミッションについてお話を伺いました。

株式会社高齢社は高齢者に働く場と生きがいを提供することを目的として、高齢者の人材派遣サービス等を行っています。

宜しくお願いします。まず事業の概要からお聞かせください。

事業は人材サービス事業です。派遣や有料職業紹介事業ですね。
特徴は会社の名前の通り入社資格が60歳以上75歳未満、定年後の人達を対象に人材サービス業を行っているところです。年金併用型でワークライフバランスを取りながら、1人分の仕事を2人でワークシェアリングをするという形で行っています。
最初は自分のいた東京ガスグループを定年退職した人を雇って、東京ガスグループにサービスを提供することが多かったのですが、だんだんとそれ以外の社員や派遣先が増えてきています。

なぜそのような特徴の会社を作られたのですか?

1つ目は、1993年私が55歳の頃にアメリカンスタイルの株主第一主義が日本でも強くなってきていたんですが、私はそれがどうも間違っていると感じて、やっぱり人を重視した会社が大事だと思っていました。資本主義に対して人本主義と呼ばれる、伊丹敬之さんが唱えている考えを、そのままではないんだけどそういう経営をしたくて、60歳になったら人本主義企業を作ろうと思ったんです。

2つ目は、1993年に橋本龍太郎さんが講演会で、少子高齢化社会がやってくると。高齢化社会がくるのは皆認識していたけれど、少子化がこんなに早くやってくるとは誰も認識してなくて、これからいろんな問題が出てくるだろうということを聞いて、これは高齢者が働く必要性が社会に出てくるなと思ったんです。若い労働力が今後10年間で500万人も不足する。それを補うには女性・老人・外国人・ロボットを活用しないといけないんです。でないと技能の承継や労働不足の問題が解決できない。

3つ目がですね、高齢者がリタイアすると、最初の半年間くらいは通勤しなくていいしノルマもないし喜んでるんですよ。ところが半年も経つと家にいると家族に邪魔にされ、やることのない“産業廃棄物”となってしまう。仕方ないから1日に5回も犬の散歩にいくと。いよいよ犬も嫌がる。そういう話を聞くと、働く場を作るのは非常に良い事だと思ったんですね。

産業廃棄物ですか。

去年の4月にカンブリア宮殿に出ましてね。そのときに高齢者の事を産業廃棄物って言ったものだから、先輩から“ひどいじゃないか”と電話がかかってきました。いや、そうじゃないと。産業廃棄物はレアメタルもいっぱいあるし今は宝の山、そういう意味で使ったんです。後付けで考えた理由じゃないです(笑)

働くことによって生きがいが出てくる。元気だから働くんじゃなくて、働くから元気になるんです。
そうすると経済効果もあるし、税収もでるし、健康保険料の収支も良くなるし、良い事だらけですよね。

強みはどこにあるのですか?

豊富な経験を活かした仕事ができる上に、低コストな点です。
例えば、私たちはクライアントから休日割増をいただいていないんですよ。派遣社員にも休日出勤手当を払っていません。定年した人は毎日が日曜日のようなものですから。
そうすると、その分コストが下がります。クライアントは嬉しい。クライアントの社員の方も土日休めると嬉しい。それに派遣社員の奥さん、旦那が日中ゴロゴロしてなくて嬉しい。そして高齢社は業績が上がる。その利益でもっと社会貢献ができて嬉しい。

土日の割り増しを付けないと良いことばかりです。これを販促手段にも使っているんですよ。

経営理念はどれくらいの時間かけて作られたのですか?

半年くらいかかったかもしれないですね。
定年した人に働く場と生きがいを提供する。人本主義を徹底する。低コスト、高品質、柔軟な対応力を武器にサービスを提供する。知恵と汗と社徳重視。
これが理念です。特に社徳。人に人徳があるように会社にも社徳があります。これがない会社とは取引しないんです。

会社の理念は、どう社員の方と共有しているのですか?

やはり良い品質の仕事を提供してもらって、高齢社ブランドを作っていかないといけません。
派遣社員の人達は、かつての部下が上司になる所に派遣されることもあるわけですから、定年前の感覚で態度が大きいと困ります。そこで、就労時のお願い事項という冊子を用意して、気を付けるべき点を共有しています。

一度リタイアされた方々に、スキルを新しく学ぶ研修などは行っているのですか?

今は皆さんが60歳までに身に付けた経験技術知識を活かせる職場に派遣する事が中心です。
全く新しい仕事を覚えさせるのはかなり困難です。3年という派遣期間の制限もありますしね。

3年の制限は問題です。
65歳で定年になりますよね。派遣して3年経つと派遣の継続ができないわけで、そのとき68歳でしょう。68歳で次の職場を探すのはとても難しくてもったいないですね。制限を撤廃してくれれば75歳くらいまで働ける人はたくさんいますよ。だから65歳以上の人には例外を設けて欲しいと思っています。
問題と言えば、もうひとつは最低賃金制度があって、東京では850円です。70歳過ぎると、必ず能力も落ちますが、そういう人にも850円払わないといけないばかりに、派遣が決まらないわけです。タダでもいいから働きたいという人もいますし、最低賃金制を一律ではなくて、70歳過ぎれば600円でいいとか、柔軟な法律にして欲しいです。

「かじワン」という家事代行サービスを始められました。女性中心で派遣先も違います。始められた経緯は?

後10年も経てば定年の基準が70歳になるだろうという前提で考えると、10年後は高齢社の労働力の供給源が減りますよね。そうなると後10年で高齢社のビジネスモデルは細くなってしまう。
だからもう一つ柱を持っておかないと会社がもたないと考えて、2023年を目標に今のうちに家事代行サービスを組み立てようと。

ターゲットは30代40代の働く女性です。そのために、価格はかなり安くしていますが、勝負は品質で、リピートを増やすモデルです。これは需要があるし、しかもこれから増えます。

家事代行サービスはゼロから立ち上げたのですか?

2012年の4月に買収したんです。
それで登録社員が220人増えたのですが、3割くらい60歳未満がいたんですよね。60歳未満は高齢社の社員の基準を満たしていませんが、リストラはしない方針なので切るわけにはいかない。それで今年の7月1日から分離独立して別会社にしました。代行サービスは3年で収支をトントンにして、10年後には高齢社ホールディングスの2本柱にしようと考えています。

上田会長が今のような考えに至ったのはいつごろですか?

私が東京ガスにいたとき、販売店さんとお付き合いがあって経営者が120人くらいいました。同じ“サービスセンター”と名前がついていても、店によって業績が全然違うわけです。よくよくみてみると、社員を大切にする会社は間違いなく伸びている。社長が高級車を買ったり贅沢している会社は伸びない。
好循環経営は私の基本的な考えですが、これは、赤字の所は早く問題を解消して黒字を定着させる。利益を出す。そしたら社員のみなさんには高処遇する。その分社員の皆さんは高質労働をしてくださいと。車輪のように回りまわって利益をだすんです。これが好循環経営です。でも、車軸の部分、社長が駄目だと駄目なんです。“馬鹿な大将敵より怖い”んですよ。

今後の展望をお聞かせください。

私はあまり1つの会社を大きくしたくないんです。
1人の社長がアットホームな経営をするには500人がいいとこなんです。ですから高齢社ホールディングスとして色々会社を作って、色んな分野でやっていこうかなと思っています。
検討しているのはいくつかあって、例えば農業ビジネスとか、シニアの婚活事業。それに共用品といって、要は健常な人も身体の不自由な人も使えるような商品の開発や販売ですね。
非常にやりたいのは、小中学校の理数系の教育。東大総長の小宮山宏さんと話をしたときにそんな話題が出たのですが、今の小学校は女性で文系の先生が圧倒的に多いらしいんです。子どもは先生が好きな学科を好きになるので、つまり多くの文系の子どもが育っています。モノづくり日本にすれば、理数系の力が弱まっている。ですので、技術屋さんのOBを送り込んで教育ができればと考えています。

やることいっぱいあるんですよ。
色々アイデアを貯め込んで、検討しておいて、時期が来たら出していこうと思っています。

今日はお忙しい中ありがとうございました。

今度来るときは4時過ぎに来てください、ビールが出ますよ(笑)

インタビュアー:将積哲哉

関連サイト
株式会社高齢社
http://www.koureisha.co.jp/
かじワン
http://www.kajione.com/