あのゲーム音楽を生で聴ける!~ゲーム音楽のコンサート情報ポータルサイト「2083WEB」様へインタビューを行いました

2009年にスタートし2011年に法人化した、ゲーム音楽のコンサート情報ポータルサイト「2083WEB」を運営されています、株式会社2083代表の齋藤健二さんにお話を伺いました。

2009年にスタートし2011年に法人化した、ゲーム音楽のコンサート情報ポータルサイト「2083WEB」を運営されています、株式会社2083代表の齋藤健二さんにお話を伺いました。

2083WEB
http://www.2083.jp

2083WEBを立ち上げたきっかけを教えて頂けますか?

立ち上げたのは2009年10月です。2005年頃からゲーム音楽を演奏する楽団が増えて、演奏会も多く開催されていました。自分もアマチュアの楽団に所属していたのですが、演奏会の情報を発信する場や、逆に楽団を探すリストが無かったんです。それで、ゲーム音楽に特化したメディアを自分で作ってしまおうと思いました。

構想は立ち上げの一年前からあったのですが、あるとき、「ファミコンが誕生した1983年から100年後の2083年には、ゲーム音楽が今のクラシックと同じくらい一般的な文化になっている」というコンセプトがふと浮かんで、よし、これで行こうと。もともと制作会社でWEBやDTPなどデザイン系の仕事をしていたので、サイトのデザインも自分で作りました。最初は制作会社に在籍しながら運営をしましたが2010年の8月に会社を辞め、それから10カ月の準備期間を取って、今年6月に法人化しました。

2083WEBの立ち上げで苦労はありましたか?

いろいろな方の協力もあり、ポータルサイトの立ち上げから今まで大きな問題もなく運営できています。例えばゲーム音楽の作曲家さんだと、それまで全く関わりがなかったのですが、初対面でもすんなり参加に快諾してもらえたり、取材の対応もして頂いて。中には難しいケースもありましたけど、概ね好意的に2083WEBを捉えてもらえました。今もやりとりをして、イベントにも出演して頂いています。

運営は順調なんですね?

立ち上げから右肩上がりです。爆発的に増えてはいないものの、ちゃんとユーザに見てもらって、活用されているな、と感じます。

なるほど。2083WEBのコンテンツは演奏会情報、対談などの特集コンテンツ、メルマガが中心ですか?

そうですね。その中でも演奏会情報がよくみられています。特に注目度の高いコンサート情報は沢山みられています。

ただ、一般的なニュースメディアでは一方的な配信で終わることが多いのですが、2083WEBでは一方通行な情報発信だけではなく、情報の仲介というか、口コミや友達同士のつながりで紹介されるような使われ方を狙っています。

そのための仕掛けを今後増やしていくと。

はい。今のところ、いわゆるソーシャルネットワーク機能は無いのですが、構想はしています。ツイッターやFacebookのソーシャルボタン(イイネ!ボタンなど)を1年前から導入して効果を感じています。ツイッターでは、ある方が「こういう演奏会があるので誰かいきませんか」とつぶやいて、知らない人同士で行ったとか、そういった利用をしてくれているようです。そういうソーシャルなコミュニティ機能は付けていきたいと思っています。

4starオーケストラ※というイベントも企画されているんですね。

2083WEBの立ち上げと同時に4starオーケストラの開催は宣言していました。今年の10月に公演にこぎつけ、3日間の公演を行いました。収益はチケットやグッズの販売で賄っています。演奏者、スタッフだけでも300~400人ほどの方が参加してくれました。来場者は5500人くらいで、無事成功に終わりましたね。今までこんな大規模なゲーム音楽イベントが無かったので、メーカー・作曲家の方を含めて好評で、反響の良さを再確認した3日間でした。

※4starオーケストラは、株式会社2083が主催する4年に1度開催されるゲーム音楽イベントです。

お知らせで英語版サイトもあると拝見しましたが?

英語版は本当に一部のページだけです。コンセプトくらい。

ゲーム音楽は海外でも支持されていますし、興味を持っている人はいるという情報は入ってきます。演奏に関して言えばむしろ海外の方が盛り上がっていますし、歴史的にも海外の方が早い。なんでそんなの知っているのっていうくらい詳しい人もいます。有名なタイトルはもちろん、レトロゲームにも人気があります。需要は確実にあると思いますが、運営体制が間に合っていないのが正直なところです。

2083WEBでは、そのまま英語化して発信するというよりも、海外の情報を仕入れたりしたいです。今のところ海外の情報は、把握している中でもよっぽど注目の高いものしか紹介していませんが、オーケストラの数自体はかなりあります。公演の数も多いです。

日本ではプロのコンサートが少なく、著名なイベントでも年に1回程度。公式の公演も年に1回ないくらいですが、海外の場合はプロのゲーム音楽イベンターがいて、ツアーで年に何十公演と行っているんですよ。ゲーム音楽イベンターがビジネスとして成り立っています。残念ながら日本にはないんです。

日本で成り立たない理由があるんですか?

単純にマーケティングや企画力不足もありますが、著作権の問題も大きいように感じます。海外が緩いというわけではないのですが、国内のほうがハードルが高く感じるケースもあります。

著作権で言うと、2083WEBではコンテンツの全てに著作権が絡んでくると思うのですが?

そうですね。もちろん4starオーケストラでは全て許諾を得て公演をしていますが、中には許諾が降りずに出来なかった企画もあります。

実はゲーム音楽の著作権は、それぞれのメーカーが持っているという特殊な業界です。8割方メーカーに帰属しているといっても過言ではありません。5社のゲーム曲を演奏するとなると、5社それぞれと交渉しないといけませんし、条件や金額も全部違います。

メーカーによっては、著作権に非常に厳しいですし、またメーカーにとってゲーム音楽がプロモーションの一環になる場合があり、例えば公式コンサートと日程がぶつかると許可されない場合があります。ゲームのブランドやイメージとも密接に結びつくので、慎重になるところも多いです。

4、5年前までは演奏の許諾自体、取りようもなかったことからすると、ゲーム音楽演奏の需要が認知されてきて、交渉すれば許諾を取れるようになったという点で変わってきていますが、ただ近年になってそういった演奏に関する著作権の問合わせが増えてきたため、メーカー自身まだルールが定まっていないところがあって、1年前の交渉時とは条件や金額が違っていたりもします。

そこの部分での作業に時間と労力を取られそうですね。

正直それはあります(笑)

企画が大変で、曲目の中で一部許諾が取れないと、コンサートの構成も変わってきてしまいますので、何とかしたい課題です。

アマチュア楽団にいたころから、著作権許諾に関する手続きの煩わしさはよく知っています。代行業者がいればなあと思っていました。2083がそういった著作権のプロモーションまでできればゲーム音楽界にとってもプラスなんじゃないかと思えます。

ちなみに2083WEBでは、著作権の対応に前向きではない楽団は演奏会情報に載せない方針ですので、2083WEBに乗っている公演は著作権に関してはクリアになっています。

インターネットメディアを通して感じたことを教えてください。

今後、メディアだけでのマネタイズは難しいと感じています。株式会社2083の事業としては、メディア・コンテンツ・出版の3つがあり、メディアはよくてもトントンだと感じています。やはりコンテンツが無いメディア・ポータルは厳しいと感じます。メディアとしての充実だけではなく、メディアを持っているという強みを生かして、コンテンツを増やしていくのが重要です。

今後はコンテンツの充実を図り、イベントの開催や、オンラインショップの開設を考えています。

オンラインショップですか。商品はどういったものを扱うのですか?

基本的には2083オリジナルのグッズ、CD、楽譜。将来的には一般の流通とオンラインを絡める構想でいます。オンラインショップは2011年12月にもスタートし、楽譜の出版は来年できる限り早くと考えています。

2083オンラインショップ http://shop.2083.jp/

楽譜って、ゲーム音楽のですか?

そうです。実はピアノに関しての楽譜はいろいろなゲームのものがあります。でも、オーケストラや吹奏楽のような大編成向けの楽譜はほとんど無いんですよ。

それぞれのオーケストラが自分たちで編曲をして演奏しているのですが、編曲のできる人がいないとそもそも書けないですし、クオリティの問題もあります。素人の編曲では、演奏が難しかったり、演奏映えしなかったりするので、オーケストラにとって、1つのハードルになってしまっています。しかしオーケストラ向けの楽譜を出版してどれだけ収益になるのかが未知数なので、やっているところがないというのが現状です。

僕自身がいままでオーケストラでやってきて、編曲ができる人の人脈があるので、そういった強みを活かしたいと考えています。世の中に、オーケストラ用の楽譜がある、という環境を作りたいと思っています。

2083WEBの今後の展望を教えてください。

やはりコンテンツに力を入れていきたいと考えています。ここ1年は4starオーケストラに注力していましたので、来年は複数のコンサートやイベント、楽譜などのグッズのリリースを考えています。

2083WEBは観ているけど、演奏会に行ったことない、という人がたくさんいます。そういった人に一度演奏会に来て頂きたいです。また来ていただけるようにいかにハードルをさげるかが課題です。

検索などで2083WEBに来た人からは、こんなにゲーム音楽の演奏会があるのか、とよく驚かれます。今は年に50回位コンサートがあります。週に1回はある計算です。それくらいゲーム音楽の演奏会があり、けっして珍しいものではないと知ってもらいたいです。

中でも、アマチュア楽団のコンサートは入場無料でやっているところが多いので、最初に聞きに行くにはいいと思います。公演は1回あたり2時間くらいで休憩もあります。是非足を運んでみてください。

ゲーム音楽からゲームが盛り上がっていくといいですね。

プロアマ問わずしっかり演奏して、見ている人に喜んでもらっているのが積み重なってきています。今はまだ課題が多いですけど、そういう積み重ねを続けていけたらいいですし、それを2083がサポートする立場として役にたっているんだという事を大事にしていきたいです。

株式会社2083としての法人化の理念は、メーカー、作曲家、実演家、ファンの4者が共存できるようなサイクルと作ること。

それを目指して今後も活動していきます。

株式会社2083では、2083WEBを中心とした情報発信やイベントの企画の他、奏者とファンが交流できるセミナーの開催など幅広く活動されています。ゲーム音楽に対する深い尊敬と愛情を感じるインタビューでした。2083さんのような文化を支え、発展に貢献する活動を私たちは応援しています。

インタビュアー:将積哲哉

ウェブサイト

http://www.2083.jp

2083オンラインショップ

http://shop.2083.jp/