車情報を中心とした読み応え十分のブログメディア「クリッカー」様へインタビューを行いました

車に関する様々な話題を発信しているブログメディア「クリッカー」を運営されています、株式会社三栄書房の小野真人プロデューサーにお話を伺いました。

今回は、車に関する様々な話題を発信しているブログメディア「クリッカー」を運営されています、株式会社三栄書房の小野真人プロデューサーにお話を伺いました。面白く興味深い話題満載のインタビューになりました。

クリッカー
http://clicccar.com/

宜しくお願い致します。まずはクリッカー立ち上げの経緯を教えてください。

お願いします。
弊社は車関係の雑誌では有名な出版社ですが、もう斜陽産業で(笑)
書籍が電子書籍に取って代わっていく中、雑誌の行く末ってどこだろうと考えた時に「デジタル雑誌」じゃなくて「ブログメディア」だろうと。雑誌とウェブじゃ、文体も構成も全く違うんです。だから既存の媒体にぶら下がらないウェブサイトを作ろうと思って、それに最適な媒体としてブログメディアを選択しました。
出版社ってタダで記事を出すことに抵抗があって、雑誌の実売にも影響がでるのではないかという懸念の声もありましたが、立ち上げに当たっては、時間をかけて社内でしっかりと検討し、マネタイズまでの戦略も作ったうえで立ち上げました。
メディアを運営する上で記事は当然重要なので、記事を書くライターは社員だけではなく、車関係の記事を書いているプロのライターやジャーナリスト、それにブロガーにも声をかけて、30人以上集めました。

サイトを拝見すると、1日に何件もの記事が頻繁にアップされていますが、ライターさんのインセンティブはどのように高めているのですか?

雑誌だと書けることって限られているんですよ。そういうしがらみを取ってしまって、普段雑誌で書けないことを自由に書けることがひとつ。あともうひとつは、掲載した記事がライブドアやニコニコニュースなど複数のメディアにも載りますんで、自分の書いたものが名のあるメディアに載って、多くの人に読まれるっていう、その達成感といったところで、みんな書いてくれてますね。

外部のニュースメディアとは最初から提携できたのですか?

できましたね。ニュースメディアにアプローチするにあたっては、既存のメディア、大きいところだとレスポンスさんとか、そういったメディアとどういう関連性で記事を出せるのかっていうマトリックスを最初に引きました。車のメディアっていうのは、基本的にはメーカーからの一次情報を加工して掲載するんですね。けどうちではせっかくのブログメディアなんだから、ライターの考えをどんどん入れてキャラの立つ記事を展開していこうと。
つまり、一次情報は大きなところにまかせてしまって、クリッカーではもうちょっと深掘りした情報を出すことにしたら、配信先のラインナップにもコクが出るよね、っていう話をしたら、面白いのでやってみましょうと。

後はキャンギャル情報とか日本中の地方モーターショーの情報だとか大手メディアがめんどくさがって動かないところを全部僕たちが拾っていて、そういうところでも大手メディアとすみ分け出来ています。

地方のイベントは多いんですか?

ありますね。だいたい今年は全国、北海道から九州まで行きました。痛車のように新しく出てきたマニアック系のイベントも行きましたし、他にも今回はインドネシアとかタイとかの海外のモーターショーも全部取材してますね。

ライターさんにとって自由に記事を出せるのは魅力のひとつだと思うのですが、その場合クオリティやサイトのコンセプト的に合わない記事などが掲載される懸念はないのですか?

そこは、ある程度最初に教育をしましたけど・・・僕はページビュー至上主義なんです。僕が信じているのはGoogleアナリティクスだけで、アナリティクスで良いトラフィックがでていたら、例え“てにをは”が間違っていても君の文章は偉い!ってなる。いくら綺麗で素晴らしい文章でも、トラフィックがでていなかったら駄目なんです。ページビューの数に対して毎月賞金をだして、どうやったら自分の文章が読まれるのかをライター同士で競わせています。僕たちのクオリティって、そういうことです。

ただ、写真の流用は全部チェックしています。他人のサイトからそのまま持ってきました、なんていうのは駄目。あとは、あんまり人の中傷をするのはやめにしようというところですね。そこだけはコントロールしています。あとはもう自由に書かせて、例え同じテーマの文章がたくさんあがってきても、ライターが違えば見方も違うんで、それはそれでボツにせずにほとんど全部出してますね。もし事実誤認があっても、それはそれでいろんな人から突っ込みが入って炎上しますので、結果それでページビューが増えてくれれば、プロデューサーとしては、OK。

そんなに炎上することがあるんですか?

みんなツイッターなんかでバシバシ叩いてきますよ。「この記事書いた奴、ほんとにバカじゃん」とか、平気で入れてきますからね(笑)
こちらが間違っていた時には、すみませんでしたって訂正します。
読者にライターの事を“あいつらほんと馬鹿だな”って思わせるように心がけています。ツッコマレビティを大事にしてるんです。ちなみに実は僕もライターやっているんですけど、キャンギャルと巨乳中心で。Google検索でも「キャンギャル+巨乳」は抑えています(笑)

ツイッターやフェイスブックとの連動もうまく回っていますか?

そうですね。ツイッターに関しては、今は記事をただ垂れ流しているだけですが、ある程度そこから来るトラフィックがあります。専任で人を割り当ててツイートに返答したりはしてないので、もうちょっとそこに人間味と言うか、やり取りがあればいいかな、とは思います。それはこれからの課題ですね。
フェイスブックの方も、読まれてはいますが、RSSで記事を流しているだけです。できれば海外の人が興味を持つような、特にポップカルチャーの記事を英訳してうまく海外の人に拾ってもらえたらとは思っています。そこである程度人が集まってくれば、なにかしらマネタイズできるだろうし。ただ今のところ明確な戦略はないです。

マネタイズでいうと、広告が基本ですか?

バナー広告なんかはある程度の値段を付けてだしていますけど、一番は実はタイアップの記事です。プロが読めばわかるとは思うんですけども、タイアップっぽく見せないように記事の中に織り込んでいます。タイアップ臭プンプンだと、消費者からすれば何それみたいな感じじゃないですか。だから、僕たちが使ってみたけどどうだったとか、一見イケてなさそうだったんだけれども、けっこう使えるぞとか。そういった記事に動画を加えたりして、他の記事の中に織込んでいます。

ページビューはオープンから1年で月間300万ページビューといったところです。この1年での収益やページビューの上がり方は良い感じですね。理想は1ページビュー1円。普通は0.1円くらいなんですけれど、これは車という大きな産業にぶら下がっているメディアですし、そのくらいの高収益をあげられるメディアに育てていきたいなと思っています。

今年は地慣らし、つまりある程度のページビューを集める事と、記事の配信先を整備しました。来年は、自動車メーカーの広告をどう取っていけるのか、いまそこに一番の目標点をあげています。いくつかアプローチした限りでは手ごたえもあります。
小回りのきいた広告をやってきたので、それをタイアップの実例としてみせながら、大きなメーカーさんとPRの話を組み立てていきたいですね。

情報をタダで出すことによって、雑誌に影響があるのではという懸念はどうでした?

影響は無いですね。クリッカーはクリッカー独自の記事を書いているので、基本的に雑誌と記事が被ることはありません。それと、ちょうどクリッカーを始めるときにフリーって言う本を読んで、その中に「情報を全て読ませた場合と、中途半端に読ませた場合と、その後商売にどう影響するのか」っていう部分があって、全部読ませた方が結局利益に繋がっていくって書いてあったんですね。中途半端にチラ見せすることの機会損失の方がでかいっていう結果が出ているのをみると、どんどん出していく方がいいだろうと。結局そこで楽しければ、買いますもんね。
音楽業界とか、他の業界もそういう方向に変わっていってますし、他の出版社が気付かないうちに、うちがどんどんやっていきますから(笑)

運用について教えてください。

運用に関して言えば、検索エンジンとの親和性に試行錯誤しているところです。Googleの検索結果の傾向を調べて、記事の出し方を変えるとか、タイトルをどう付けたらGoogleがほほえんでくれるのかとか、そういうことを日々試行錯誤しています。来年にかけてはどうやったらYahooニュースに載るのか、Yahoo攻略にも力を入れています。
ウェブメディアをやるにあたっては、今までの出版人の知識は絶対役に立たないから、本作りの知識は全部捨てて、ゼロから専門家のお話を聞きましょうって誓ったんですよ。「それはこうじゃないの」ってついつい言いたくなるんですけど、それは止めましょうと決めました。出版社らしいサイトを目指したら絶対うまくいかないのがわかってたんで。僕たちは良い専門家をパートナーに迎えられたので、よかったかなと思ってます。その方に運用についていろいろ教わって、実践して、経験を積んでいます。コンデナスト社とか小学館のポストセブンとか、イケてるメディアを参考に学んだりもしていますよ。
記事数が多いし、24時間仕事なので、40過ぎてやるには大変ですけど、楽しいですよ。

オープンから1年経ちましたが、次の1年はどのようにされていきますか?

うちには車以外にも、バイクやファッションなど様々な雑誌があります。この1年でウェブでのビジネスの仕方がわかってきたので、他の雑誌にも横展開できるかなと。そうやって横展開していくことで、ひとつひとつのメディアのランニングコストを下げて、利益を追求していくということを考えていますね。
それで言うとクリッカーは最初のケースとして良い成績をだしています。

今まで出版社って、ウェブ制作会社からウェブサイトの開発を勧められて、いざ作っても人がこなくて、じゃあ新しい機能を入れましょうといってどんどんお金を使わされて、最後駄目になることが多かったんですよ。そういうのを見てきたので、今回は余計な機能を付けずにミニマムでスタートして、運用でどうやっていくのかに力を入れるという形にしました。やっと僕たちも運用面で体得できたと感じています。紙面とウェブは別物なので、切り離した考え方っていうのを社内で啓蒙活動して、親派を作っていきます。今はまだレジスタンス活動みたいな・・・地下組織で動いてるみたいなもんです(笑)
この地下組織を大きくして行って、会社の二大勢力にしていけたら一番だと思ってます。紙とウェブで共存していけるように。それが自分の使命かなと。

クリッカーはブログメディアの特性と特徴を深く理解された上で運営されています。多くの業界や企業が陥りがちな情報の出し惜しみを止めて積極的な情報発信に目を向ける、おふさげ系の記事にも冷静な目的があるなど、とても学ぶことの多いインタビューでした。

インタビュアー:将積哲哉

ウェブサイト

http://clicccar.com/